発酵菓子カヌカについて②〜なぜオーガニックなのか〜
前回は、カヌカの名前の由来を記してみましたが。
今回は、なぜこのようなお店をやっているのかについて書いてみます。
発酵菓子カヌカは、オーガニック×発酵をテーマにした焼き菓子屋です。
発酵については、パン作りから始まって発酵沼にハマっていったわけですが。
何でオーガニックなのか。
ちょっと長くなりますが、お付き合いください。
私は、昔から「自然派」みたいなものが好きで、雑誌や本など、買ったり借りたりして読んでました。
生まれも育ちも島根県の旧平田市という場所の山の中。
家の周りは森と畑、山を降りた小学校も中学校も目の前は海という大自然に囲まれて、自然の中で遊んで育ちました。
家のごはんも、おばあちゃんが作る伝統食(味噌や漬物は手作り、季節ごとの食べ物も細々作って食べさせてくれました)や、
母の作るごはん(玄米ごはん、父の好きな魚料理、畑で採れた季節の野菜たち)など。
いわゆる「カレー」とか「唐揚げ」とか、子供の好きな洋風料理は一切出てこない家。
私はそれが不満で、だから自分で食べたいご飯は自分で作るしかなく、その延長で料理に興味を持ちました。
だから、子供の頃の「足りない」は、結構必要事項だなとつくづく感じています。
話がそれましたが、そんな風に育つと、反発心もありつつ、やはり軸にあるのは自然の大切さ。
中でも「自然の食べ物」の良さと言うのは、もう身体に刻み込まれていました。
将来は飲食店がしたい!と中学生くらいの頃から考え始め、商業高校に進み、どうせなら食のプロになろうと、管理栄養士受験資格が得られる大学へ進学。
卒業後、無事合格して、その後は料理の腕を磨く為に、上京して飲食店で料理人として働いていました。
学生時代も、就職後も、軸にあるのは「真っ当な食べ物を出す飲食店を開きたい」という想い。
ですが、値段や人件費や教育を含めた「真っ当な食べ物を出す飲食店」をする難しさなんかも、同時に学びました。
私がお店をするならば、カフェをしたいとずっと思っていたけれど、そのやり方で本当に良いのかと考え始めたのもこの頃だったと思います。
その後、結婚して子供が生まれた事が、大きな大きな転機になりました。
特に二人目はアトピーで、小さな身体が痒くて泣いているのは見ているのも辛い。
この頃、東洋医学で対応したいなと思い、クレイやアロマ、もちろん食についても更に深く勉強を始めました。
この頃は、小さな子供を抱えながらだったので、情報収集のメインがネット情報。
講座なんかも受けましたが、ほんと、振り回され凝り固まっていたなと、今思うと苦笑いしてしまう時期です。
一人目出産後から、そのまま東京で子育てしていく未来が見えなくなっていました。
横浜出身の夫を説得して、2018年2月、大きなお腹を抱えて島根県雲南市へUターン(正確には、地元の隣に移住したのでJターンと呼ぶらしいです)。
引っ越しから1ヶ月と断たずに三男坊出産したので、かなり無茶したなと思いますが、この時自分を動かしたエネルギーは凄かったと思います。
出産から3ヶ月ほどしてから、両親の会社へ就職。
移住を決めた時から考えていた、新商品開発を始めました。
両親の会社は、今はポン菓子をメインに製造販売している小さな小売店。
そのポン菓子に着目し、「ポン菓子グラノーラ」を製造開発して販売スタートしたのが、就職から2ヶ月後でした。
この時から、使う材料はとことんこだわりたく、メインのお米は雲南市木次町の「宮内舎」さんの農薬不使用の玄米と米粉を使わせて頂けることに。
他の原料も可能な限りオーガニックのものを使用しました。
原価が高いので販売価格はどうしても上がってしまい、高すぎると言われながらも、良いものは分かってくれる人が必ずいるはずと思い販売を進めました。
その後、同じくポン菓子を使ったオートミールビスケットや、塩麹クッキーなど商品を増やしていった訳です。
ここで、なぜオーガニックなのかに話を戻します。
まず、私のお菓子を通して伝えたい裏テーマがあります。
それは、「余計な薬を使うことなく自然に育った素材の美味しさを手軽に知ってもらい、考えるきっかけにしてほしい」と言う事。
お菓子はあくまで嗜好品で、生きていく上でなくても良いものです。
やはり、基本は日々のごはん。
日々のごはんを整える事ができれば、私たちは健康に元気に生きていくことができます。
けれど、日々のごはんを整えるためには、この忙しい日常の中では難しい部分も多い。
更に、メディアなどの影響で、おうちのごはん作りへのハードルがかなり上がってしまっていると感じます。
素材が良ければ、ごはんとお味噌汁、あとは余裕があればプラスすれば充分なのに。
日々の食卓には、ごはんと、何種類ものおかずが並んでいるのが当たり前。
そんな風潮があれば、「○○の素」や、あらゆる加工食品を利用して、手間をかけず美味しくたくさんのおかずを用意する事ができる商品が売れるのは当たり前です。
そしてそんな食品は、原価を低く賞味期限を長く、より簡単に美味しく(感じるように)なるようたくさんの添加物などの化学物質が使われます。
そんな食卓が当たり前になればなるほど、「余計な薬を使うことなく自然に育った素材の美味しさ」は遠のいて行きます。
なので、私の選択した方法が「焼き菓子」でした。
今、スーパーで無農薬の人参と慣行栽培の人参が売っていれば、値段の安い慣行栽培のものを選ぶ方が多いと思います。
けれど、安いクッキーと、ちょっと高いけどこだわっているクッキーがあれば、自分へのご褒美などで高い方を選ぶ方は、野菜よりも多いと思います。
そして、そこで選んで購入して食べてみる、ということは、きっかけ作りとしては十分な経験になると考えました。
もちろん、素材が良いからといって、食べ過ぎれば毒になります。
なので、私のお菓子を毎日たくさん食べて欲しいとは思いません。
けれど、「あぁ、美味しいな、へー、オーガニックって書いてある。オーガニックって、美味しいんだな」みたいなことを感じて頂けて、更にその後、スーパーで、ちょっと高いけど無農薬の人参買ってみようかな、なんてことになったら、こんなに嬉しいことはありません。
ちなみに、私の使う「オーガニック」の意味は、「余計な化学物質を使うことなく育ったもの」と言う意味です。
有機JAS規格や、自然栽培や、いろんな分類があると思いますが、一番伝わりやすい言葉だと思うので、便宜上使っている「オーガニック」です。
焼き菓子を通して「余計な薬を使うことなく自然に育った素材の美味しさを手軽に知ってもらい、考えるきっかけ」が増えれば、そこから更に深く知ろうとする方も増えるかと思います。
これは、一見遠回りなようで、かなり近道なんじゃないかなと思っています。
今の世の中、化学物質が溢れています。
私は、農薬や添加物は、悪者だとは思っていません。
戦後、食糧難の日本を支えるために、より手軽にたくさんの野菜やお米を作る事ができる技術は、必要不可欠でした。
おかげて私たちは、今、いろんな種類の食べ物を、お腹いっぱい食べることができるようになっています。
けれど、今、ここまでたくさんの化学物質が本当に必要でしょうか。
悪者だとは思いませんが、過剰すぎるのではないかとは思います。
今の技術があれば、余計な薬を使うことなくお米や野菜を育てることも可能なのではと思いますし、必要以上に添加物を入れた食べ物を量産する必要もないのではと思います。
私たちが今食べている、市場に出回っている「超加工食品」と呼ばれる食品は、人類が、生物が、今まで食べてきた食べ物とは違うものです。
それが、ここ数十年の中でどんどん増えて、添加物の他にも、私たちは、1週間にクレジットカード1枚分のプラスチックを食べているとも言われています。
今まで自然になかったものを、たくさん、多種類、身体に入れている私たち。
果たしてそのまま食べ続けて、健康な身体でいられるでしょうか。
絶賛、人体実験の真っ只中な現在。
何もなければそれで良いけれど、重篤な健康被害が出たとして、誰が責任をとってくれるんでしょう。
私たち一人一人が、知って、考えて、選んでいくしかないと思います。
その、「知って」いくきっかけのひとつに、私の焼き菓子がなると良いなと思っています。
日本は遅れているとはいえ、今住んでいる雲南市のスーパーでもオーガニック食品や無農薬のお野菜なんかは、移住してきた6年前よりもかなり増えていると感じます。
そんな食品を作ってくれている生産者の方に感謝して、選んで、応援して、更に作る農家さんが増えていくような良い循環が、もっと生まれますように。
まとまりのない文章ですが、「オーガニック」をテーマにしている理由をお伝えしてみました。
最後まで読んで下さった方がいたとしたら、ありがとうございます。
今後の予定はこちら
【12月】
2日(土)店舗営業日
9日(土)クリスマスマーケット出店(松江)
16日(土)店舗営業日
23日(土)テルサdeマルシェ出店(松江)
24日(日)店舗営業日
※23日夕方、24日はカヌカパークのオードブルご用意します。
ご予約など詳細は追ってお伝えします。お楽しみに!